忍者ブログ

Author

HN:
Ree(りぃ)
job:
中二
hob:
ぷにち、すぐりん、オリジ
into:
絵描きみたいな文字書き。
好きなものを好きなときにかいてます
Passヒント:結婚記念日

【創作について】
D-00のキャラを違うところで
ちょこまか動かしてたりします。
超絶パロ厨



ツイッター

【twitter=創作】ree_kai

【twitter=版権】

New CM

[07/27 yuzuki]
[06/09 Ree]
[06/07 yuzuki]
[05/26 Ree]
[05/26 NONAME]

QR

AD

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

略奪男のレシピ

ec17b884.jpeg

梅雨になったので、あじさい出会いの図。
東→葵なかんじがお気に入り(*´v`)

オリジナル小説
【登場人物】
・東総一郎
・西園寺葵


雨の日の横断歩道、人の悲鳴、血の臭い、足元に広がり行くのは
お前が唯一「好き」と褒めてくれた俺の瞳と同じ赤、
どういうわけか、思い出すだけでも俺の目の前には雨が降る、

しとしとしとしと、
雨はお前が教室の窓際で本を読む天気。

そういう音を聞きながら俺の時間は止まっている、


その日もお前は俺じゃない他の男が好きになったと言って、
『練習台』に交差点の信号が青になる瞬間、隣に突っ立っていた俺の手を取る。

男嫌いの彼女がバテるまで三秒、

三秒後には、必ず「東、もう無理気持ち悪い。」と言って払いのける。

まさか、
その三秒が毎度、俺にとって、そのときのすべてだなんて彼女は知らない、

練習台と言われ様が、気持ち悪いと扱われ様が、
俺の全神経は手を繋いだ瞬間、彼女の自分より一回り小さな手に向けられ、
その時から三秒間、俺の全部は彼女のものになる。

決していい扱いはされていないのに
白と黒の横断歩道は天国にさえ見えやがる、
なんでかなんてわかり安すぎて嫌になる。

好きだった。


どうしようもなく大切で、
決まって俺とは全然違うタイプの男が好きになる彼女は、
俺が馬鹿みたいに緊張して告白しても冗談扱いして笑い飛ばした。
傷つかないわけじゃない、そんな簡単に諦められる軽い気持ちで好きになったんじゃないから、
それでも、せめて彼女に幸せになって欲しくて、俺なりに一生懸命、甲斐甲斐しく尽くしてた。


青信号を行き交う人々とすれ違う、
雨が降り出して、その場の人間が足早になる。

なのに、俺の手を引いて前を行く彼女は突然立ち止まった。
三秒経っても放されない手、なんの気まぐれかと思い彼女を覗き込む、
彼女の胸部に真っ直ぐ突き立てられて鈍く光ったナイフ、

どうか夢であってほしかった。


羽のように軽い音で横たわった彼女の視界が俺を捕らえることはなく、
深い群青色の瞳はゆっくりと伏せられて、
刺した通り魔の男を、血が上りきった頭で何度も殴りつけた。
どうしたらいい、視界が一気に狭まって冷静な判断なんてできない、
俺の大事な彼女を平気な顔で奪っていく男が憎くてたまらない。

ヘラヘラと笑う男の目もまた、俺をちゃんと捕らえない。

野次馬はどこからともなく、すぐに湧いて来たのに、
治安機関が到着したのも遅ければ、救急車はもっと遅い、

彼女が雨に濡れない様に抱きしめても、温かさも柔らかさもないそれ、
「気持ち悪い」と、俺を嫌がる声さえない。
抱く冷たさに心臓が五月蝿い音を立てて、煩いだけじゃなく、本当に痛い、
心音がする度に身体を貫かれている気がした。
背中を汗が伝う感覚がリアルに分かり、うまく呼吸ができない。

「もう三秒経ってんぞ」
「キモイって言えよっ…!」

嫌がられたほうがいいなんて、俺はおかしくなったのか、

人形のようにされるがままの彼女は、明らかにもう息をしていないのに、
やっと来た救急車に運び込まれて、
サイレンの音が雨音に掻き消えていくのを他人事のように眺めながら、
ずぶ濡れになった俺だけが渡りきった歩道に残された。

なんで彼女がいないのに、信号は赤になるんだ。
どうして平気な顔をして皆足を進めるんだ、
まるで何もなかったように俺の視界を人は動いて行く。

アイツは居ないんだぞ、もう俺の隣を彼女は歩かないのに、
(なんで俺は生きてんだ、)

脇道に無造作に転がっていた銀色の懐中時計を拾い上げ、
ミシリと軋む音がするほど握り締める。
先ほどまで彼女の首にかかっていたそれ、


俺の一番大事なものは、三秒弱で奪い取られてしまった。



どうして俺は生きているのか、
彼女が全てだったのに、その彼女がいない。
その事実を突きつけられる度に、俺の根幹は軋み、悲鳴をあげる、
こんな想いをするのなら、どうして俺は彼女を好きになった。



そう、大事なものなんてあるとロクなことがない、
だから、それから他人の大事なものを奪ってやった。


これは事前事業だと、自分を正当化してしまえば何も感じなくなった。



「お前の大事なものは?」
「へぇ、じゃあ俺がぶっ壊してやるよ」

しとしとしとしと、

あの白と黒の道で、俺は、空から雨さえ奪ってやりたいと思ったのだ






end
PR

Comments

Comment Form